第十五話 「記憶〜さけび」  E1442120N133636

 最初にひとこと言わせてください。萌 え 死 ぬかと思いました。週の始めの丑三つ時に、意味不明の雄たけびとともに悶絶した腐女子はいったい何人いたんでしょうか?頼んます、脚本さん…もう、体がもちましぇん…
 さて、人類軍に制圧されてしまった竜宮島、史彦の座っていた指揮官用の椅子にそっくり返りながら、「ふふふ、悪くないすわり心地だ」というバーンズ大佐、やっぱり小物だのぅ(笑) 
 エンドレスで3人ババ抜き(つまんなそうだ〜)という、芸のない時間つぶしをしているゴーバインチームとは対照的に、総士&舅史彦さんの会話…おいおい、総士とゴーバインチームってホントにクラスメートなのかよっ、とつっこみたくもなる絵づらなわけで。
 島をあっさりと人類軍に明け渡したことに納得がいかない総士、「溝口さんたちが戻ってきたら…」と史彦の弱点をついたつもりが、「一騎に合わせる顔がない…か?」とあっさり返り討ちに。フォモ同士の弱点の突き合いは、年季で勝るオヤジの方に軍配が上がったわけですが(笑)。「人間の血を流したら、一騎が戻ってきたときツライのは君だ」、「もし一騎が人の血を流してしまっていたら、君が助けてやってくれ」、とくらくらするような舅っぷりの史彦さん。一騎と会話してなかったことを悔やみますが、それは総士とて同じこと。
 一方モルドヴァではその溝口&真矢コンビが一騎の捜索に出るところです。日野洋治に託されたデータを握り締めて、「また何もできなかった」と悔やむ真矢 。慰める溝口。そうそう、真矢ひとりでどうにかなるような状況じゃなかったんだから、いいんでないですか、そのデータを受け取れただけでも。
 そうして、モルドヴァ地下では一騎と紅音(ミョルニア)が対峙しています。「かあさん!」と呼びかける一騎に「わたしは真壁紅音ではない、おまえたちがフェストゥムと呼ぶ存在だ」と答えるミョルニア。でも、「我々は私にこれ以上の分岐を許さない」と語るとおり、ミョルニアはここまでの分岐によって、すでに個性を持ち始めてしまったのでは無いかと思ったのですが。そして、その個性を持たせてしまったものこそは、かつて同化された紅音の魂そのものだったのではないかと。
 それを象徴的に表すのが、その後に続く紅音とグロいスフィンクス方フェストゥム(=フェストゥムの総意)との会話です。「私は我々に・・・」と言い続けていたミョルニアが、フェストゥムの総意に向かって「おまえ」という二人称を使うんですよね。「わたしはわたしになりつつある、おまえもおまえになりつつある」、そうやってフェストゥムとミョルニアの間に境界線が生まれ始めたからこそ、お互いに「会話をしなければならなくなったということで。紅音と同化し、その息子である一騎に触れたことで個性を持ち始めたミョルニアがフェストゥムの総意に伝えたかったことは、その個性の意義、しいては個性を持つ人間というものの存在意義だったのでは無いかと思うのですが、フェストゥムの総意はそれをあっさりと拒絶します。「我々はおまえを認めない」という言葉とともに、紅音を飲み込むフェストゥム。
 マークザインに乗り込んだ一騎(ちなみに、マークザインもニーベルング搭載型でしたね)、「やめろーーっ」「食った、かあさんを、食った…」という悲痛な叫びとともに、一騎くん、暴走モードに突入。
 一騎を心配して上空を旋回する溝口&真矢機の前に現れたのは、例の親玉フェストゥムとそれに挑みかかるマークザインです。フェストゥムに腹を貫かれながらも、後ろの羽みたいな装備から発射されたアンカーと、ホーミングレーザーで反撃するマークザイン。そして、マークザイン自らが、機体の内部からシリコン状の物質を染み出させて周りの全てを無秩序に同化し始めます。そうしてフェストゥムとマークザインが沈んだマグマの海のようなところから生まれでたのは・・・巨神兵(笑?まあね、今回はEVAファンにとってはデジャビュの連続なんだから、今更何が出てきても驚かないさ(笑)。
 で、一騎くんはどこにいるか、というとディラックの海?っていうわけでも無いでしょうが、過去回想モードへ入っているようで。まずはろくろを回す史彦の後姿。「なぜ母さんは死んだの?」と聞いても「俺のせいだ」としか答えない父・・・続いて暗闇の中から現れたのは、左目に包帯を巻いた幼い総士。その姿は、総士を傷つけておきながらその場を逃げてしまった一騎を責めさいなむわけですが。総士、転んだって言い張ってたんだね。う、なんか泣ける…でも、その事がかえって一騎を追い込んでいたという皮肉。「怒ってるんだろう?憎んでるんだろう?戦って死ねといいたいんだろ、総士?」と叫ぶ一騎。竜宮島にいる間にその半分でも言っていれば、こんなことにはならなかったのにね。「オレなんか居なくなればいいと思ってた…でも、せめておまえに謝りたくて…」と涙を流す一騎。一騎の自己否定の源は、やはり親友の目を傷つけたこと、そしてそのトラウマを克服するための総士との和解の過程を経ずしてここまで来てしまったことだったのか。
 そして、その闇に表れたもうひとつの影が乙姫なわけで。乙姫は、ジークフリードシステム無しでも脳皮膜にクロッシングできるんですか?すげぇ兄貴がうらやみそうだ(笑)。そこで彼女は「あなたが総士を総士にした大事な傷、自分である証、総士は一騎に感謝してるんだよ」とまた意味深なことを告げます。「何故、総士を傷つけたの?」と聞かれて絶句する一騎。失った記憶は不安の源となるわけで、この記憶のエアポケットに、謎を解く鍵があるってことですね。「私が教えてあげる、ホントのこと…」と乙姫が告げると、場面は回想モードに。あの神社の大木の下、ほほえむ幼少総士の右手からつきでるシリコン結晶、そして第一話ででてきた受信機らしきものから聞こえる「あなたはそこにいますか」の声…もう、どっきどきモードでCMに。
 AパートとBパートの間のCMがこれほど長く感じられたのも久しぶりなわけですが、CMあけ残念ながら、一番肝心な一騎が総士を傷つけた瞬間はカット・・・っていうか、この先にお預け?勿体ぶるなよ〜(泣)!しかーしっ!この後怒涛の腐女子悶絶攻撃がっ(笑)。
 「同化っていうんだって。ひとつになれるんだって。ひとつになろう、かずき…」お願いです、そのショタ顔ショタ声で、そんな鼻血噴きそうなセリフ言わないでください、綾波バージョン総士くんっ!(<思いっきり解釈間違ってます、もちろん故意に)。
 まあ、ちょっとは真面目に考察すると、こんなに小さい頃から「島のコアを守るために生きろ、自分や他の誰かのために生きてはいけない」と親から言われて育つという事自体、考えられないトラウマになっているはずで。つまり、総士は、「自分が無条件に(つまり、島なんぞ守らなくても)その存在を受け入れてもらえている」という全能感を得るべき幼少時代に、それを与えられなかったということですね。これって、人間としてはかなりのアイデンティティーの危機なわけで。自分が自分として存在する事を許されなかった彼の出した結論は「僕は始めからどこにも居なかったんだ」という一騎以上に激しい自己否定、そして「だったらおまえとひとつになれる場所へ帰りたい…かずき…(<吐血っ!)」という事だったんですね。
 果たして、これと同じ会話が、総士が左目を失う直前にもあったのかどうかは定かではありませんが、今、ここで一騎が出した結論は「オレはただ、もう一度総士と話がしたいだけだ」という、今一番彼にとって切実な一言でした。その言葉とともに消え失せる、過去の総士の亡霊…
 「あなたはここに居ることを選んだんだよ」と一騎に告げる乙姫。同化っていうのは、すなわち何もかも境界線の無い混沌に帰る(=いなくなる)、ということであり、会話をする、というのは、会話する自分と相手の存在を肯定できる世界にとどまる、ってことで解釈合ってます?
 まあ、このあたりを見ていて思い浮かんだのは、聖書の冒頭の「初めに言葉ありき」というくだりや、あるいは日本における「言霊」信仰といったあたりです。大雑把に言ってしまえば、事物は名前、それを表す言葉を持ったとき初めて存在する、といったような意味で良かったのかな?言葉こそが、自分と他人の境界線をはっきりさせる道具であり、言葉の介在なしにお互いの存在を確かめることはできないのだ、というのが、実はファフナーの一貫したテーマだったんですね。前半見てるときはさっぱり気づきませんでした…(苦笑)
 「コアの進むべき道を示してくれてありがとう」といって消え去る乙姫。じゃあ、ここで一騎が「総士とひとつになるもんっ!」って答えてたら、世界は劇場版EVAエンドだったんかい?とつっこみのひとつも入れたくはなりますが、まあ結果オーライ(byアウル)ってことで(笑)。
 一騎が、「ここにいること」を選択したおかげで、マークザインの同化暴走は収まり、代わりに巨神兵もどきは自分で自分を食って消滅していくのですが(アポトーシスをアニメ的レトリックで表現すると、こういう感じってことか)、おかげで溝口 &真矢も危機一髪同化に巻き込まれずに済むわけで。そして、卵(あるいは子宮)を暗示するような塊から殻をやぶって外に出るマークザイン。文字通りのDeath&Rebirthだな(笑)
 その頃の竜宮島では、乙姫ちゃんに向かって熱くクワガタを語る芹ちゃんだの、赤いバラの花束ってどうよ、な日野道生だの、道生、弓子、カノンのギャグとしか思えないからみだの、「原稿の締め切りがあるんだ」by小楯父だのと、結構つっこみどころ満載な状況なわけですが、長くなるから省略(笑)
 暴走が止まったマークザインのコックピットをあける真矢。決戦第三新東京都市?などというつっこみはもうやめておこう(笑)。真矢ちゃんが涙にくれて「良かった、一騎くんが無事で…」という言葉に「ホントにここにいるのか?…ありがとう」とお礼は言うものの、「総士は?」と、またもや乙女の敗北感を煽るような一言を。「アイツが島の外で見たものをオレも見たかったんだ…そうすればアイツのことがわかるんじゃないかって…」 、と真矢ちゃん相手に一騎の大告白大会が(笑)。「帰ろう、帰って話そう」と、語りかける真矢ちゃん…もうね、アンタは一騎くんの母親がわりになって見守ってあげるしか無いって。うう、なんか、カワイソウなメインヒロインだなあ(苦笑)
 長いこと父親に本当のことを聞けずにいた母のことを尋ねると、「史彦をかばってフェストゥムにやられたんだよ」と溝口さんが答えてくれます。すでに確定している母の死(同化ですが)をはっきりとトレースすることで、自分の気持ちに区切りをつけられた一騎。あと残るのは、総士と愛を 語り合う事だけだっ(笑)!「何も知らなかった頃のようにはあの島のことを考えられない…僕が行かなければならない場所なんです、竜宮島は」と、通常の3倍くら饒舌な一騎くんに「おんなじような事言ってたやつがいたなぁ」と笑う溝口さん。 それを聞いて「総士!」と呼ぶ一騎くんの満面の笑みのまぶしいことまぶしいこと(笑)

 はあ、やれやれ、今回はセリフが長くて参った〜(苦笑)。特に乙姫ちゃんの「おとぎ話」のくだりなんていうのは、まさに小説的だったわけで。総士の左目に関しては、まだ若干謎が残るわけですが、どうやらあそこで、総士のフェストゥム化を一騎が止めたことにより、総士は左目を失うという代価を払いつつも己のアイデンティティーを取り戻し、逆にそのときの記憶を失ってしまった一騎が自己否定スパイラルに陥ってしまった、っていう感じと予想してみる。まあ、とりあえず、一騎くんが同化の道を選ばなくって良かった良かった。だって、いくら相手が最愛の総士でも、同化しちゃったら、ハグもキスもS○Xもできなくなっちゃうってーの(笑)