第二十四話 「対話〜ミール」  E1700120N520058

 道生の命を賭けた最後の攻撃も虚しく、空中に実体化するマークニヒト。怒りに我を忘れた一騎のマークザインが、海中から矢のように飛び出します。「返せ、総士を返せっ!かえせぇええっ!」 渾身の力を込めたザインのこぶしがマークニヒトの腹部をえぐり、緑の結晶が現れる。やっぱり本気出したザインは強いっ!しかし、目的のものを奪ったニヒトは、一騎をあざ笑うかのように虚空に消える。「そうし〜〜っ!」一騎の絶叫とともに始まったラス前のファフナー。ヒリつくような緊張感で始まったのに、やっぱり腐女子の脳は、この一騎の絶叫に反応してしまう(苦笑)。泣けばいいのか萌えればいいのか。もう悩むのはやめて、最後まで付き合うぞ(笑)。
 23話で失った者たちへの追悼のAパート。自分が、ひとつの喪失の悲しみに囚われて閉じこもってしまった間に、また別の大切なものを失ってしまった小盾保と、近藤剣司の自責の念。「約束したのに・・・」と、思い出の日野家の縁側で泣き崩れる弓子。そして、ひとり山のベンチに座る一騎と真矢。この山に良く登っていたのは、父親を思い出すためだったけれど、「お父さんが死んだらしいって聞いても、実感なくって…もう、多分ここへは登らない…」と語る真矢。「一騎くんは、どうしてここが好きなの?」と聞かれて「俺じゃなくて、母さんがここが好きだったらしい」と答える一騎。総士は、そんな一騎の心の中を知りたくて、ここに来ていたんだっけ。「北極に敵がいるって、本当かなぁ」「行って確かめてくる」 右半身を同化されて、杖が無ければ歩けないような状態の一騎がこのまま北極に行く、ということは、死にに行くのと同じということは、真矢も理解しているはず。「このまま島にいることだってできるんだよ?」というのは、真矢の一騎への最後の告白だと思ったのは考えすぎでしょうか?この二人の会話に、「総士」という言葉は一度も出てこないけど、消滅してなお一騎の心を捉えているのは、他ならぬ総士であるということを、痛いほど実感している真矢。どう見ても、人として生きられる残りの時間はわずかなはずの一騎は、その残された時間を、総士を奪ったものへ「落とし前」をつけるために使い尽くそうとしているわけで。残りわずかな時間ならば、もうここには居ない総士では無くて、まだここにいる自分によりそって欲しい、という真矢のささやかな願い、でも、返ってきたのは「遠見は、そうしてくれないか?」という優しくて残酷な言葉。一騎が真矢に望んだのは、自分と共にいてくれることではなく、自分が存在していたという思い出を覚えていてくれること。「ううん、一騎くんが行くなら、私も行くよ」 その真矢の言葉を否定することも無い代わりに、「遠見には、生きていて欲しいんだ」とつぶやく一騎。死ぬのは総士とオレだけでいい・・・まぁ、巷では一騎と真矢がラブラブになった、なんぞと言われていますが、どっこいそんな事は無いだろうと管理人は思っちゃうわけで。真矢は終始一貫して一騎ラブだったけど、一騎にとっては、一番気になる異性どまりだったという証明、っていうか、普通なら一番気になる異性で十分おけーなハズなんですが、なんせ、一騎には自分の命より大事な同性がいるからなぁ(笑)。でも、真矢よりももっとかわいそうなのは、そんな二人を影で見ていたカノンだろうと。「やっぱり、私には一騎にかけてやる言葉が無い…道生…」彼女も、また自分を戦場から救ってくれた大事な人を失った上に、彼の最後の励まし(=一騎へ自分の思いを伝えること)すらできないでいるわけで。カノン、あんた、本当に優しすぎるよ(泣)。
 ひとり山からの帰り道、要澄美に引き取られていく剣司に出会った一騎と真矢。「剣司、おまえはそこにいろ。もう誰も…死ななくていい…」 そう声をかける一騎に、涙目で、「かずきぃっ!オレと勝負しろっ!」と唐突に叫ぶ剣司。「近藤くん、一騎くんの体は…」と、思わずまた口をはさんじゃう真矢を、一騎が制止する。
 一方、人類軍からの二極両面作戦への参加要求に、参加の意志を伝えるように指示を出す史彦。「あんな作戦への参加、取り消せっ!」とつめよる溝口に、「もはや戦う以外に術は無い」と答えますが。「知るかっ!オレたちが盾になって、子ども達を守るんだよっ!」と更に食い下がる溝口に、「一騎は一人でも行く気だ。皆城総士の仇を討つために…あいつは、もう、長くない、遠見先生の研究も間に合わん」と、こぶしを震わせながら答える史彦。一騎の心をいっちばん良くわかってるのは、やっぱりふたりの仲を公認、っていうかもう、熱烈推奨し続けてた史彦パパだったと。「残りの時間の使い道くらい、いくらでもあるだろう」と、溝口も真矢と同じことを言うんですが、史彦は、「俺という人間が、他に術を知らんのだ」と答えることしかできない。「生きて帰ってくる理由さえ用意してやれないのか、オレたちは…」とうめく溝口。そうそう、モルドヴァの時のアナタは大きな勘違いをしてたんですよ、溝口さん。真矢ちゃんじゃあ、一騎が島に帰ってくる理由にはならないの。それにしても、この溝口&史彦っていうおやぢかぽーも、最後まで濃いなあと思ってしまったんですが。史彦&溝口&紅音の関係って、一騎&総士&真矢みたいな感じだったんだろうなぁ、と想像してみる。いや、そうだったに違いないっ(笑)!
 要家の道場で、正真正銘これが最後の真剣勝負をする一騎と剣司。道着姿の一騎くんが、有り得ないくらいりりしくて、またもやポーズかけて、キャプしまくっちゃいました。右目だけ赤の一騎くん、萌っ!半身不随状態のはずの一騎にすら勝てない剣司の悔しさ、でも何回も一騎に倒された末に、遂に一騎の腕を取って投げワザを決められた剣司。一騎に一度でいいから真剣勝負で勝つこと、それは剣司にとっては、咲良にふさわしい自分になるために、自分自身に課した、他人から見れば滑稽なほどのこだわり。一騎と並んで畳の上で大の字になりながら、「今の、咲良が見てたら、驚くだろうなぁ…咲良に言われたんだ、弱い男には興味無いって…咲良、自分のお父さんみたいな人、タイプだったから…」と涙ぐむ剣司。ごめん、剣司、キミが立ち直る言葉もすっごーく感動的だったんですけど、やっぱり脳が腐ってる管理人は、それよりその横で、憂いに満ちた顔で大の字になっている一騎くんがあまりに色っぽくって、そっちに釘付けでした…こんな超美麗作画で、しかも、道着の前はだけさせてるしっ!ああ、もうダメ、先週の発言撤回。やっぱり一騎は受!っていうか、むしろ自分の欲望を必死で抑えている総士への誘い受でもおけー!って、最後までこんなバカなことしか考えられない管理人を笑ってやってください。そうでもしないと、やってらんないんだってっ(泣)!
 「一騎、オレも衛みたいに強くなれるかなぁ?」と問う剣司に、「ああ、なれる」と答える一騎。そこにまたもや鳴り響くフェストゥム襲来の警報。「オレも…オレも行くっ!」 そうやって、遂に再び戦うことを決意した剣司。それにうなずく一騎がまたりりしくて…(以下エンドレス)
 島に向かってくるのは、スフィンクス型が一体だったのですが、史彦が作戦を指示した直後に訪れたのは、2体目のフェストゥム。先のスフィンクス型は囮かと思いきや、後から来たフェストゥムとスフィンクス型との戦闘が始まります。 初めて見るフェストゥム同士の戦いを、とまどいつつ見守るCDCのメンバーとパイロットたちの前で、後から来た紅いフェストゥムは圧倒的な強さを見せ付けてスフィンクス型を倒します。勝った紅いフェストゥムが空中から姿を消した直後に、自動的に解除されるヴェルシールド、そこに入ってきたのは日本語の通信。「彼らはまた来る 会話がしたい 山で待つ 真壁 紅音」 その文面に、澄美、溝口、そして史彦の間に緊張が走ります。そして、ひとり山には既にその来訪を察知していた乙姫が。ヴェルシールド開いたのは、やっぱり乙姫なんでしょうね。そして、乙姫の前に姿を現すミョルニア。かつて一騎が島へ帰って来た時と同じように「お帰り」と優しく語り掛ける乙姫の笑顔でAパート終了。
 さて、Bパートなんですが、なんせ、ミョルニアの語りが長いっ!とにかく長いっ!全部書いてる根性ないんで、かいつまんじゃってもいいですか?まあ、早い話が、フェストゥムが同化しちゃった何億という人間の中で、真壁紅音だけは特別な存在だったと。何故特別かといえば、彼女だけが同化されても全体の中で画一化されることなく、独自の共鳴核を形成し続けたから…って、共鳴核って、なんだよっ、わっかんねーよっ(涙)。最初は些細な変化だったものが、多くのコアがその真壁紅音の核に共鳴することによって、10年近くかけて、全体に影響を与えるまでになったということらしいですが。「真壁紅音だった存在は、多くのコアたちと共鳴し、我々の内部に時間を絶対軸とする場を形成してしまった」 フェストゥムの外には、もちろん時間はずっと存在しているわけですが、このミョルニアの説明を聞く限り、フェストゥムの内部っていうのは、時間すら存在しない完全なる虚無であるらしいです。ビッグバン以前の宇宙、みたいな感じなんですかね?その中にあって紅音はその存在を響かせ続けることで、時間を生み出したと。…そっか、だから、「紅(=血の色なんだから、多分命の象徴)音(共鳴)」だったのか。いここでまたひとつ、ネーミングの謎解明。
  まあ、このあたりの抽象的なセリフを、一回だけTV放送を見てわかれっていうのはどう考えても無理なわけで、やっぱりファフナーに録画は必須。ぶっちゃけ、同化された紅音は、肉体は失っても、精神は「共鳴核」として存在し続けた、存在し続けて他のコアに影響を与え続けることで、同化したものを全て無に還してしまうだけだった故に変化もおきずにいたフェストゥムの内面に、「変化」を与えたってことでいいのでしょうか?変化が起きる=時間の発生。フェストゥムの中で10年の時を刻み続けた紅音の精神が、遂にミョルニアを、ミールに拮抗する存在にまで育てあげた、それは、フェストゥムの概念には無かった新たな分岐。
 「何故紅音だけなんだ?」という史彦の問いに、「真壁紅音が、自ら同化を望んだということだ」と答えるミョルニア、その言葉に檄して、銃をミョルニアに向ける史彦。紅音の姿、紅音の声で、紅音を奪ったフェストゥムが目の前で語りかけているという事だけでも、史彦にとっては耐え難い苦痛だったはずが、「自ら同化された」などと言われてしまえば、そりゃあまあ、頭に血も昇るだろうと。「もう一度言ってみろっ!」と叫ぶ史彦にかまわず、「無論、真壁紅音自身にとっても、それは不測の事態だった。ただ、我々と接触した瞬間、我々を迎え入れ、祝福した」と続けるミョルニア。「祝福だと?」と聞き返す史彦。祝福って言えば、普通に考えれば、結婚を祝福する、みたいな「お祝い」っていう意味の言葉ですよね。でもここで言う祝福っていうのは、それよりはむしろ、キリスト教的な意味での「祝福」の方が近いかも。「神に祝福される」っていうことは、たとえどんな罪びとであろうとも、神を信じるならば、神によってその存在を認められて愛される、ということ。また、教会の礼拝の最後に行われる「祝福の宣言」という意味の祝祷(benediction)の語源が、直訳すると良く(bene)話すこと(dicto)、に連なることも併せて考えれば、真壁紅音が同化される瞬間に、フェストゥムに与えた祝福とは、フェストゥムという存在を認め、受け入れ、なおかつ対話をしようとしたという事なのか。フェストゥムにとっては、破壊も同化も、宇宙に存在するものへの祝福、何故ならば、それは、相手が「存在するもの」であることを認めた上で、自分たちと同じ「無」に還してあげる、という行為だから。これって、イドゥンが相手を同化するときによく言う「おまえは、わたしだ」という言葉に表れてますよね。しかし、それを「逆転」させてしまったのが真壁紅音。「彼女は我々を理解した、最初の人類だ」という言葉に、はっとする史彦。彼の脳裏に蘇ったのは、若き日にろくろを回しながら、史彦に語ってくれた紅音の言葉。「実体化したフェストゥムは、全体が珪素系の物質で形成されているわ。この宇宙で最も多く存在する物質、要するに、ただの土よ」 フェストゥムを理解しようとしてろくろの上で土の手触りを確かめ続けた紅音、そしてその言葉をなぞるように、(紅音の百倍ヘタだけど)今だに土に触れ続けている自分…あー、でも、ここで一言言わせて。史彦って、若いころより、今の方が味があるかも。なんか、若いときの史彦って妙にのぺーっとした感じがしちゃって(笑)。っていうか、真壁って、紅音さんの方の苗字だったんですね。なんで、こっちの苗字を残したんだろ?まあね、22世紀の竜宮島は、男女同権だろうから、どっちをとろうが個人の自由なんだとは思いますが(って、ここで、頭の中で「皆城一騎」と「真壁総士」のどっちの方が語感がいいかなぁ、なんて考えてしまったことは、内緒だ・笑)。
 「何故ここに来た?」と問う史彦に、北極のミールに消滅させられそうな自分のコアを救って欲しい、と頼むミョルニア。本来、「無」であるから、分裂も相互の消滅もありえなかったはずのフェストゥムを「逆転」させたのは、紅音が負わせた「ひとつの傷」。無であるはずのフェストゥムを「理解」し、「あなたは存在する」と初めて教え、そしてその存在を「祝福」したことが、完全な「無」であったはずのフェストゥムに「傷」を与えた、と理解してよろしいか?他者から「存在する」と認められてしまえば、「無」は「無」ではなくなるわけで。そして、「無」であったものが、自分が「無」ではなくなったことを自覚させられるのは、他者から自分に与えられた「傷」という印。何も無いところに、傷、は付けられないものね。ここで思い出すのは、16話で竜宮島に攻めてきたプレヤデス型の親玉の、消えるアヌビス型。ソロモンからも姿を消すことができるアヌビス型の位置を特定することができたのは、一騎のマークザインが付けた「傷」があったから。そして、何よりも、無に帰ることを欲した総士を、再び「存在させた」ものが、一騎が付けた左目の傷であったという事実。
 真壁紅音によって祝福された結果、ミールに拮抗し、ひとつの「存在」となったミョルニア。人類の祖先アダムは、神が土から作って命を吹き込んだと言われているけれど、同じように土から作られながら命を吹き込まれなかった、いわばもうひとつのアダムともいうべき存在がフェストゥムだとすれば、それを祝福し、命を吹き込んだのは真壁紅音自身。「私は、真壁紅音の意志を継ぐものとして、今、ここにいる」と語るミョルニアは、既に今までの「無」のフェストゥムではなく、真壁紅音に命を吹き込まれた、「存在するもの」としての新しいフェストゥムの形であるということか。
 「しかし、このままでは、ミールの内部に残されたコアの消滅に伴い、私も最初から存在しなかったものとして消えるほかない」「紅音は、今もフェストゥムと会話しているのか?」「彼女は多くの共鳴となって響き続けている。人類とミールが互いを滅ぼす前に、私のコアと接触して欲しい。お前達に必要なものを、そこで与えてやれるだろう…」 失われた命を返すことはできなくとも、これから先の未来で求めるものを共有できる、と語るミョルニア。そして、その竜宮島の人たちにとって「必要なもの」の一部が、乙姫を通じてデータとして、ミョルニアからソロモンへと送り込まれます。その膨大な量の「必要なもの」の中にあったのは、フェストゥムの攻撃から機体を守る方法であったり、人体とフェストゥムの融合パターンであったり。真壁紅音が、フェストゥムに同化されても尚、人類とフェストゥムとの共存の道を求め続けたことに、思わず涙する千鶴。「今渡せるのは、これだけだ。殆どの解答は、ミールの中に囚われたままでいる」と語るミョルニア。「お前のコアを助け出せば、パイロット達は助かるのか?」 何よりも必要な「その答え」を、果たして得られるのかどうかを尋ねる史彦に、「彼らの肉体の同化現象は最初の段階に過ぎない。真壁紅音の共鳴核は、その先にある多くの解答を導き出している…」 という解答を与えるミョルニア。この言葉によって、北極での戦いは遂に、「死にに行くもの」ではなく、「生き残るためのもの」という意味を与えられます。激戦地である北極のミールへ接近する最適の方法も、既に送ってたと語るミョルニア。更に彼女が続けた言葉は「うまくいけば、お前達が奪われたものをひとつだけ取り戻せるだろう…お前達がジークフリード・システムと呼ぶものだ…ミールは、お前たちの力を手に入れようとしたが、我々にあれは使用できない。だから、ミールは今も、あれを使用できる人間を生存させている」というもの。「それは、システムの搭乗者のことか?」「そうだ、皆城総士という名の人間だ」。ミョルニアが告げたこの一言こそが、一騎に今度こそ、「生きて帰ってくる理由」を与えたわけで。「総士が…生きてる…」 今まで見せた、どの表情よりも悦びに満ちた一騎の目のうるうる度は、一騎がモルドヴァから帰ってきたときの総士と同じくらいの勢い。そうだ、その勢いで、北極まで飛んでいって、存分に総士に愛情表現してやってくれ(泣)。一騎の笑顔とともに、ここのところのあまりの欝展開で凹みまくりだった管理人に、最終回へ向けての明るい期待を抱かせてくれちゃたミョルニアに乾杯!
 ミョルニアがそこまで語り終えたところで、再び島に襲来するフェストゥムの気配。「もはや、お前たちを同化せず、私ごと滅ぼす気だ…」 完全な無であるはずのフェストゥムに与えられた「存在」という名の傷は、変化を嫌う北極ミールにとっては一刻も早く取り去らなければならない危険な因子なわけで。次々に襲来するフェストゥムの大群を前に「アルヴィスの子らを、ミールの元へ。この島は我々が守る」と言ったミョルニアは、今や竜宮島にとっては誰よりも頼もしい存在。そして、ミョルニアとともに島を守ろうとしたのは、ミョルニアの存在に導かれて再び目を覚ました甲洋でした。優しかった甲洋の面影をそのままの穏やかな笑顔で「みんな・・・ありがとう・・・さよなら・・・」という言葉を残して、先ほど戦っていたミョルニアと同じようなフェストゥムの姿へと変わった甲洋。何故「さよなら」なのか?フェストゥムの姿に変わってしまったら、もう元には戻れないのか?ミョルニアが真壁紅音の意志を継いだように、翔子の意志を継いで島を守ろうとする甲洋の姿もまた、神々しいまでに美しい。真壁紅音の精神が「ミョルニア」という奇跡を起こしたとすれば、甲洋の優しさもまた、「スレイブ型」という奇跡を起こしたわけで。今、島を守ってくれているこの二つのフェストゥムの存在こそが、人間とフェストゥムの共存のひとつのあり方を示す道標となるのでしょうか?
 「あくまで島のためにお前の申し出を受けよう」とミョルニアに答える史彦。「…なんで…紅音の名前を使った…?」 島の代表としてではなく、、かつて紅音を愛した一人の人間として問う史彦に、「それが最適の方法だったからだ」という予想どおりの答えをしたミョルニア。しかし、そのミョルニアに、微妙な変化が。「いや、お前に会いたかったからかもしれない」「そう、お前に会いたかったからだ…」 フェストゥムの奥深くで共鳴し続ける真壁紅音の魂が徐々に表面に現れてきたかのような、フェストゥムには無いはずの「情」の発現。そして、遂に真壁紅音自身の言葉がミョルニアの口から発せられます。「ありがとう、史彦、一騎を育ててくれて…」 思わず史彦がその言葉に振り返った瞬間、戦闘形態へと変化して、もはや彼女にとっても明確な敵となったフェストゥムと戦うために飛び立っていったミョルニア。史彦たちが、子ども達に与えることができずにいた「生きて帰る理由」を、そして「未来への希望」をもたらしてくれた上に、今島のために戦ってくれているミョルニアは、間違いなく真壁紅音の「もうひとつのかたち」。彼女のもたらした「福音」こそが、竜宮島の大人たちを、そしてパイロットたちを、迷い無く最後の決戦へと向かわせるための「海図」となるのでしょう。
 紅音のもたらしたデータによって、同化現象の緩和薬を投与された子ども達。その薬が咲良の症状にも効果を現したとの千鶴の言葉に思わず涙ぐむ剣司。咲良の元へ、それが剣司が生きて島へ帰る理由。また、紅音のデータは、4人の機体に、ジークフリードシステムをパイロットへの負荷増大の心配なく搭載させることまで可能にしました。全員がクロッシングして意志疎通ができることになる代価は、「全員が痛みを共有してしまう」こと。「総士は、オレたち全員の痛みを感じてくれていた」「オレたちだって耐えてみせるさ」 いかん、もう、一騎が「総士」って口にするたんびに、どきどきしちゃう私は、かんぺき総士欠乏症(苦笑)。 「もうひとつ、一機でも欠ければシステムに支障をきたすこと…ひとりも死ねないよ、いいね」と念を押す西尾ばーちゃん。「死ににいくわけではない」「みんなで生きて帰ります」 なんというか、あまりに王道な設定と、あまりに王道なセリフなのに、思わず見ているこっちが背筋がピンとしてしまいそうな清清しい展開。史彦が、各機体コードとパイロットを確認する場面も、もうゾクゾクしてしまいました。マークジーベン、あんなに盛大に壊れてたのに、直せるんだ(笑)。カノンの機体は咲良のマークドライなんですね。カノンにとって、容子の次にカノンを理解してくれていた咲良の機体に乗れることは、喜びであり、また身の引き締まるような心地良い緊張でもあるのでしょう。
 「北極海のミールに対する総攻撃に乗じて、特定のコアと接触しデータを入手、同時に皆城総士を奪還する。以上が今作戦の目的だ!」 Aパートでは「フェストゥムの殲滅」を目的とした、ある意味限りなく可能性0に近い絶望的な作戦だったはずの北極決戦が、紅音のもたらした「海図」にって、はっきりした、実現が可能かもしれない作戦へと変わったあたりが、なんというか、「またやられちゃったよ」と管理人が思ってしまうところなわけで。
 「作戦名はどうする?」という問いかけに、「人類軍はヘブンズドア、天国への扉と名づけています」と答える澄美。「縁起でもねぇ」という保の言葉に「じゃあ、私達は、空にしたら?」と答える真矢。そして、作戦名は真矢と史彦によって、「蒼穹作戦」と名づけられます。そうか、「蒼穹」っていうのは、この最後の作戦名だったのか。最終回に向けて、ひとつひとつパズルのピースが埋まっていくように、設定から名前までが明らかにされていくあたりが、なんというかもう快感に近い。
 カノンがいつ容子のことを「かあさん」と呼ぶのかというのが、すっごく気になってたんですが、こんなところに持ってきたんですね。感動。カノンは、容子を「かあさん」と呼ぶために生きて帰らなければいけない。そして、弓子のおなかにやどった道生の子どもに、「まだ道があること、希望があること」を伝えるためにも帰ってこなければいけない。一騎も、今まで史彦と語ることができずにいた紅音のことを聞くために、土の触り方、皿の焼き方を教えてもらうために(っていったって、あっという間に一騎の方が上手になりそうですが)、帰ってこなければいけない。
 いよいよ蒼穹作戦への出発のとき。保と容子と溝口は、デビルレイ要員として出撃でしょうか?その後ろに、あの人類軍3人娘がいるのにはちょっと笑わせていただきましたが。結構芸が細かいぞ(笑)。先週の予告編では、人類軍バージョンで緑だったカノンのシナスーツも、今週は真矢と同じピンクに修正してもらってますよ(笑)。真矢がみんなの腕に書き込んだのは、「W175N57」という、現在の竜宮島の座標。タイトルバックに常に出ていたこの数字も、ここに繋がってたのかっ!またしても、「やられた」な感じ。「遠見、お前の分、書かせてくれ」「うん、お願い」 Aパートでは、「自分以外には誰も死んで欲しくない」と思うからこそ、できれば一人で北極に行きたいと願っていた一騎の心も、紅音にもたらされた希望によって、「みんなと一緒に生きて帰ってくる」とポジティブに変わったわけで。もちろん、その「みんな」の中には総士も入ってると(笑)。
 「行こう!そして、帰ってこよう!」 一騎、良く言った、ありがとう!この最後の言葉を信じて来週の最終回を待ちましょう。どんな結末でも受け入れるつもりではいるけれど、やっぱりこれ以上、死なれるのはイヤだ…もっとも、、熾烈を極める最終決戦なのだから、犠牲が出ないっていうのもむずかしいかとは思うんですが…(ヤッパリコワイ…)

 今回は、なんというか決戦前夜の張り詰めた空気の中にも、未来への希望を持たせてくれるという、この上なくポジティブな展開で、最終決戦の前の回としては本来なら言う事ナシなデキだったんですが…うう、やっぱり、ツライ、とうとう総士が一回も出てこなかった…(泣)。総士が出てこないファフナーなんて、ファフナーなんて…(泣)…すんません、本当に最近の管理人はヤヴァいです(実は心ひそかにアニメージュ1月号な展開を期待しちゃってた、っていうのはナイショだ・苦笑)
 それはそうと、今回は、本当にえっらい作画がいいなぁ、と思ったら、ボンズだったのか…どおりで、ザイン&ニヒトの戦闘シーンとか、一騎と剣司の勝負シーンとかの感じが、「ここ最近一年くらい見慣れちゃった」ような気がしたわけか。特に、道場で剣司の攻撃を猫背気味に待つ一騎の立ち姿って、えっらいエドくんに似てましたね。あんまり一騎くんがカワイくて、何枚もキャプってしまいました。ボンズ、GJ!でもって、最終回の前半部分はスタジオダブで、後半はジーベックですか、ボンズは今回限りですかそうですか……よりによって、何故今回だけボンズなんだ………うぉおおおっ!見せろっ!ボンズ総士を見せろぉおおおおっ!(号泣)

 というわけで、長々と書き続けてきた私のファフ感想も、あと一回で終るんですね。やっぱり寂しいなぁ。来週の今頃、感想を書き上げる元気が残っているような最終回を、ぜひっ!!