最終話 「蒼穹〜そら」  W1753247N570231

 雪景色の竜宮島で、曙光の下、遂に4機のファフナーが北極へ向かう時が訪れます。「蒼穹作戦を開始する。ファフナー部隊、出撃!」 島の人々に見送られるデビルレイ。ゴウバインメットを持った広登の姿が泣ける。「大丈夫、あの4人なら、必ず希望に辿り着く。まだ、外にいられるうちに見送ることができて、良かった…」乙姫に残された、「人として生きられる時間」も、終わりを告げようとしているわけですが…
 浜辺で倒れた乙姫が目を覚ましたのは、メディカルルーム。この部屋の乙姫と千鶴と史彦の会話によって、初めて竜宮島のミールの真実が明かされます。島にいる動植物が死に行くのを止められないのは、島のミールが「死」を学んだから。岩戸から出てしまったがために、もうすぐ寿命が尽きることになる乙姫をコアとするミールは、そのコアとともに自分も死のうとしていると。「その前にミールに教えてあげないと、生命にとって終る事が新しい始まりであることを。生と死がひとつのものとして続いていく事を。」 ならば、ミールを捨てればいいじゃないか?当然といえば当然の疑問ですが、それに対する千鶴の答えは、「あなたたちが今、呼吸しているもの、それがミールよ」というものでした。かつて結晶鉱物であったミールは、ある時バイオスフィア(生命が存在できる独立した環境=地球のミニチュア版みたいなもの)へと進化し、自らを空気体と作り変えた、それが人類とミールの共存への第一歩。「ある時」というのは、やはりミールが暴走して、皆城鞘を含む多くの犠牲を生んだあと、ということでしょうか。この辺の詳しいことは、結局わからずじまいでしたが、暴走の結果フェストゥムと人間のハイブリッド型となった胎児の乙姫をコアとすることによって、ミールが生まれ変わったのでしょう。そして、コアである乙姫の成長とともに、ミールもまた成長してきたと。乙姫の死とともにミールも死んでしまえば、ともに生きている島の人々にも死が訪れる。「ミールはまだ、成長過程、生と死を少しずつ学んでいるの。それをここで終らせるわけにはいかないの。この宇宙で命だけが持てるうれしくて悲しい物語、それを私は体験できたんだよ、芹ちゃん…」 死を恐ろしいと感じるのは、生きているからこそ。常に終わりを意識しなければならないほど短いものだとわかっていながら、「生きる」ことを選んだ乙姫。「いずれ、島のミールが生命の循環を完全に理解すれば、この島は地球と同じ存在になり、海の底でも宇宙でも、我々を生かし続けるだろう」というのは史彦の言葉ですが、まだ島のミールはそこまで成長していない。ならば、島と一体化して島の命を救おうとしている乙姫の意志を守るためには、北極のミールに対抗できる力を持たねばならないわけで、それは一重に蒼穹部隊の4人の肩にかかっているわけですが…
 北極へと向かうデビルレイの眼下には、人類軍の夥しい数の部隊が展開しています。「各部隊の安全は、それぞれ自分で確保せねばならんぞ。敵の読心能力に対抗するため、各部隊には独自の判断で動いてもらう」 OPERATION HEAVEN’S DOORは、指揮系統を放棄した全部隊規模での遊撃戦。元から人類軍の指示通り動く気などない蒼穹部隊にとっては、むしろありがたい。というわけで、ここで一騎たち4人のブリーフィング。総士もいない、前回指示を出してくれた道生もいない、4人が指揮官で4人が兵士という初めての戦いに向けて、全員に作戦を確認させる一騎。初めてファフナーに乗ってからの彼の精神的な成長をうかがわせるシーンですよね。自分を否定し続け、ひとりで何もかも抱え込んでいた一騎が、積極的に他人と関わり、役割を分担することで大切な事を成し遂げようとしている。4人で確認しあった作戦の名前は、OPERATION THE  BLUE、クロス・ドック・フォーメーションでの「決して振り返らず、目標に到達することを最優先」とする戦術、そして、一番大事なのは、クロッシングの機能を失わないためにも、「誰も死なないこと、皆城くんと5人で島に帰ること」。
 遂に始まった、人類とフェストゥムの決戦。「一騎!お嬢ちゃん!剣司!カノン!全員、生きて帰ってこいっ!」 最後まで真矢のことは「お嬢ちゃん」、な溝口の檄とともに降下するコンテナ。着地点のフェストゥムを撃つ剣司のメデューサでの爆撃とともに、蒼穹部隊の決戦も火蓋を切ります。緊張感あふれる場面なんですが、うー、今ひとつファフナーの動きにキレが感じられないコンテと演出が、管理人的にはちょっと残念。かっこいい戦闘場面の表現って、むずかしいんだなぁ、と心の中でつぶやいてしまった…
 一方、金色のフェストゥムの根によってからめとられたまま捕らえられているジークフリードシステム内の総士。ニヒトにクロッシングされて苦痛の表情を浮かべる彼の首から下は、緑の結晶に覆われたままなわけで。「アルヴィスの子よ、我々に本当の戦い方を教えてくれ。今、この地にいる人間達をお前が滅ぼすのだ…」 「か…かず…き…」 考えてみれば、竜宮島から連れ出されてから2週間近くの時間が経過しているはずですが、この間総士はずっとこの状態だったのかと、考えただけで胸が痛くなりそうだと思ったところで、Aパート終了。
 「効果的に部隊を入れ替え、敵の主力をおびき出し、各個撃破…」 イドゥンに問われるままに答える総士。「最小限の犠牲で敵を倒す…犠牲を考慮し、敵をたおす…」 総士の立てた戦略に従って防衛ラインを後退させるフェストゥム側。今まで戦略無く攻めてくるのはフェストゥム側で、それに戦略を持って対抗してきたのが人類側だったわけですが、今度の作戦では、その立場が全く逆転してしまっているってことでしょうか。デビルレイから補給された武器に持ち替え、いよいよ敵の本拠地に突入を敢行する一騎たち。それを察知したイドゥンが、一騎たちを倒す方法を、あろうことか総士に聞くわけで。このあたり、総士は決して自らの意志を失ってるわけじゃないんですよね。何故なら、その直後に、左の頬から目に向かって結晶が這い上がってくる感触に、「その傷に触れるなっ!」と激怒しているし。彼が正気を保っていること、そして、彼の心の最後の拠所が一騎との絆であることを象徴するこの言葉は、かなーり萌、だけど、あまりに切ない。それでも、「連携を分断し、各個撃破…」という、一騎たちにとって一番恐れていたはずの戦略をイドゥンに教授する総士。フェストゥムの読心能力のことを考えれば、だますことはむずかしいけれど、人間の心を理解しきれないフェストゥムには、総士の心の奥底までを読みとることはできない。素直に一騎たちを倒す戦略を教えた総士の真意はどこにあるのか?「どうすれば、彼らを分断できる?」と問うイドゥンに、「防衛すると見せかけ、おびきよせ、犠牲を払って分断」と答える総士、実は、総士の真意が、フェストゥムに「犠牲を払わせること」にあったのは、後になってわかってくるわけですが。「我々はお前の思考を理解した。私がアルヴィスの子らを滅ぼそう。私が学んだ憎しみで。」 「ま、待てっ!」と叫ぶ総士の左目を容赦なく覆っていく緑の結晶。イドゥンが総士を生きながらえさせてた理由はただひとつ、総士を使って人間を滅ぼすこと。それに必要なのは、口と、見える方の目と、頭脳だけで十分だという残酷さ。
 防衛すると見せかけたフェストゥムにおびき出されて侵攻した人類軍も、総士の立てた戦略によって後続部隊との間を分断され、次第に不利な状況に陥っていきます。内部に侵入した一騎たち。「あなたはそこにいますか?」と問われ、「前はどこにもいなかった、だが、今はここにいるっ!」 戦うことの本当の意味を見つけたカノンが、今までと真逆な言葉を叫んだところで、思わずじーん、と来ちゃいました。一騎たちが近づくのを感じつつ、もはや完全に左の目も奪われてしまった総士が微笑みながらつぶやきます。「もうすぐだ、もうすぐで、奴等は理解する。それまで…生きて…うわぁあああっ!」
 CM明けの短いCパートでは、岩戸にもどる乙姫を先頭に、それを式服で見守る千鶴、芹、里奈、そして史彦の姿。そして、北極の地で敵をなぎ払いつつ進む一騎たち。そんな中、この4人の中ではウィークポイントとも言える剣司を狙い済ましたように襲うのは、他ならぬイドゥンが同化したマークニヒト。剣司のマークアハトの右腕は、それこそ赤子の手でもひねるかのように、あっさりと吹き飛ばされます。その痛みを共有する残りの3人。「ダメだ…死ぬ…」恐怖にとりつかれた剣司に「あきらめるなっ!」という仲間達の声がとどき、そして、視線を落とした剣司の目に飛び込んだのは、右腕に真矢が書き記したW175N57の文字。必死の力をふりしぼり、マークニヒトに突きたてたルガーランスが、ニヒトのバリアをやぶって行く…
 Dパート冒頭は、岩戸の前に進みでたところで、それまで気丈に振舞っていた乙姫が、突然泣き崩れるシーンで始まります。生を知ってしまったがために生まれた死=いなくなることへの恐怖。あれほど全てを悟っていた乙姫でさえ、その感情から逃れることなどできない。
 一方、剣司のルガーランスによって傷つけられたイドゥン=ニヒトは、今まで体験のしたことの無い感覚に驚きとまどっているわけですが。「何だ、これは?」 「それが、痛みだっ!」と叫ぶ総士。いち早く剣司のところに辿り着いたカノンが、今度は背後からニヒトをルガーランスで貫きます。そして、再びニヒトを襲う、「痛み」の感覚。「フェストゥム、教えてやる、僕がお前達に教えた戦い方の名を!消耗戦だ!痛みに耐えて戦う戦法だっ!」 ・・・総士、かっこ良過ぎっ!仲間達が戦っている間、たった一人でイドゥンと対峙し続けた総士の真意は、フェストゥムに「痛み」を教える事だったわけで。第23話で、フェストゥムに侵食されかけた総士は、「痛みを理解した程度で、全てわかったつもりか?おまえたち「死」に、痛みを感じることができるのか?」とフェストゥムに問いかけています。フェストゥムが「死」であり、「存在しない」以上、痛みを感じることはない。犠牲を払うことに痛みを感じないからこそ、一騎たちが消耗しきるほど何度も攻撃をしかける事が可能だったんですよね。痛みを感じないフェストゥムと、痛みを感じる人間が戦ったのでは、人間の方が圧倒的に不利なわけで。
 乙姫が、フェストゥムに「悲しみ」を教えることで戦いをやめさせようとしたならば、総士は「痛み」を教えることで戦いを恐れさせようとしたと。ジークフリードシステムごと囚われていた2週間というのは、言わば、総士がフェストゥムに「存在すること」を教えるためのたった一人の戦いだったわけで。総士自身、その2週間とは、同化され、いなくなってしまう事への恐怖への戦いであったはずですが、その恐怖を、クロッシングという一番直接的な方法でイドゥンに伝え続けていた、逆に言えば、イドゥンはあまりに「ジークフリードシステム」にこだわってしまったために、結果として総士を通じて、人間を「理解」しすぎた、すなわち「存在する」という事を知ってしまったというように、管理人は解釈したのですが。剣司が振り上げたルガーランスが、再びニヒトを貫き、思わず悲鳴をあげるイドゥン。「それが、戦いの痛みだ!存在することの苦しみだ!いなくなることへの、恐怖だ、フェストゥム!うぁああっ!」 ニヒトとジークフリードシステムがクロッシング状態にある以上、イドゥンの痛みもまた総士に伝わっているわけですが、痛みに耐性の無いイドゥンとは比べ物にならないくらい、痛みに耐えることを知っている総士。総士の2週間にわたる苦しみは、決して無駄にはならなかったと。でも、その過程の壮絶さを考えただけで、あまりに総士が哀れだ…(泣)。
 兄が痛みに耐えている一方で、妹の乙姫も、「居なくなることへの恐怖」と戦っています。ぽろぽろと涙をこぼし、千鶴にすがりつきながら「わたし、覚悟できてるのに、こわい!こわいよぉ…」と泣きじゃくる乙姫。自分の選んだ道だから後悔しない、と言っても、いなくなることが怖くない人など居ない。たった3ヶ月の間しか外にいることの許されなかった乙姫ですが、その3ヶ月がどれほど輝いたものであったか。「千鶴、あたしここにいたい、ここにいたいよぉ…」許されないわがままとわかっていても、泣かずにはいられない、まだ幼い少女の心を始めてさらけ出した乙姫。そんな乙姫を抱きしめながら、自分ではどうしてあげることもできない千鶴は、「ごめんね…ごめんね…」と詫びるしかないわけで。そして、千鶴の腕に抱かれながら乙姫がつぶやいた言葉は「おかあさん・・・」、それは、岩戸から出たとき生まれて初めて、彼女が口にした言葉。「ありがとう、千鶴、あたし、わかったよ、こんな風に私は、この島になればいいんだ…私は、あなたたちみんなを抱きしめる。おかあさんみたいに…」 短い間だったけど、大切な友達だった乙姫の言葉に、嗚咽する芹と里奈。
 一方、初めて知る「痛み」に耐え切れずに、逃げ出そうとするイドゥンを、真矢のマークジーベンが追い詰め、退路をつくるために発射したホーミングレーザーも、一騎のザインに手のひらで受け止められてしまう。逃げ場を失ったイドゥンは、「戻せ、我々を、無に戻せ〜っ!」と絶叫しながら、自ら生み出したワームスフィアで自爆しようとします。その気配を察して「みんな、離れろっ!」と叫ぶ一騎。しかし、一度自分の「存在」を認めてしまったイドゥンには、結局自分の存在を消すことはできなかった。存在を知ってしまったことを後悔しつつも、知らなかった「無」に戻ることもできずに悄然と空中に浮かぶマークニヒト。「生きていることに感謝したいか?それが、今、ここにいることの喜びだ、フェストゥム!」 総士がフェストゥムに教えたのは総士自身の心。過酷な状況に置かれた竜宮島の子ども達の中でも、総士と乙姫というのは、群を抜いた不幸っぷりな人生だと思うのですが、それでも二人は、「生きている」ことに感謝している、そして、「ここにいることの喜び」を、誰より深く理解している。逆に言えば、苦しみに満ちた人生だからこそ、幸せの本当の価値を知っているのか?でも、やっぱり管理人は納得できない、あまりに不公平じゃぁありませんか(泣?もっとも、現実世界でも、人の生なんて本当に不公平にできているわけで…ああ、それでも、もう少しだけでも、この兄妹に幸せを教えてあげたいっ(泣!
 総士のおかげで(といっても、誰もそれに気づかない、っていうのがまた泣けるんですが)、ミョルニアのコアのところまで辿り着いた一騎たち。フェストゥムの根にがんじがらめにされていたコアを解放し、ザインの両手でそれを包むと、膨大な量のデータが一騎たちのシステムに流れこんでいきます。そして、その膨大な量のデータが送信されている先は竜宮島。データの行方を見つめながら「かあさん・・・」とつぶやく一騎が、有り得ないほどらぶりー。平井、GJ!紅音が自分の命をフェストゥムに与えることによって、生み出した「人類とフェストゥムの共存」への道しるべが、アルヴィス中のサーバー、そしてウルドの泉を満たして行きます。「一騎たちが、紅音の意志に、希望に届いた…わたしも…」岩戸に戻る前に、ただひとつの気がかりだった一騎たちの消息を知ることができた乙姫。
 そして、一騎たちは、遂に総士が囚われている場所に辿り着きます。黒く回転するスフィアの中に入っていく一騎。「総士?」と呼びかけると「かず・・・き?」と答える声が…。侵入者を察知して、スフィアの中に入ろうとするフェストゥムを阻止するジーベン。「絶対に、通さない!」という真矢の表情が、また、えらくりりしいくて、ちょっとかっこよかった(笑)。
 そして、遂に運命のEパート。再び岩戸につながれた乙姫、「コアの再同期を開始します」という千鶴の声とともに、緋色の液体が岩戸の内部に満たされて行き、目をつぶった乙姫がわずかに微笑みむ…。そして、北極では、遂に総士の元へ辿り着いた一騎が、ジークフリードシステムを覆う金色の根に触れようとしているところで。一騎のザインに反応したフェストゥムの根は、一斉にザインへの攻撃を開始し、するどい棘となってザインを貫き、その痛みを一騎と、そして一騎と総士を守るべくフェストゥムと戦う残りの3人が共有します。「一騎、だめ、抵抗しないで!」 キールブロックで総士を助けようとしたときと同じように、一騎のザインに最後のクロッシングをする乙姫。その言葉に、「俺はお前だ…お前は俺だ…」と、フェストゥムの根を同化しようとする一騎。それに答えるように、フェストゥムの根は一気にほどけ、ザインに同化されていきますが、その同化の瞬間のあまりの激痛にのけぞる一騎の瞳は、瞳孔が開いたように紅に染まってしまいます。「敵のミールの鼓動…一騎が、敵の意志を同化した… 」とつぶやく総士。「そう、受け入れることも、ひとつの力だよ」と一騎に語りかける乙姫。そして、ザインが、その左手に持ったジークフリードシステムのコックピットと同化し、遂に一騎と総士が再びクロッシング状態に入ります。「総士、そこにいるか?総士!」「一騎…」「総士…いるんだな、ここに…」一騎の両目からとめどなくあふれ出す涙。「ああ、僕はまだここにいる…」 その声に、真矢も剣司も、カノンも、安堵するのですが、そのとき、自分の視界の異変に気づいた一騎。それに驚き気遣う真矢に、「同化したせいで、肉体の同化現象が再発したんだ。大丈夫だ、治療を受ければきっと直る」という総士。その言葉を聞いて「帰ろう、島に…一騎くん…」と語りかける真矢。うーん、管理人は、こういう性癖の持ち主なもんで、総士と一騎があまりに何度もお互い名前を呼び合う件についは敏感に反応しちゃうんですけど、それに負けず劣らず、真矢も何度も「一騎くん」って呼び続けてるんですよね。真矢が名前で呼ぶ相手って男の子じゃ一騎だけだし…(でも、一騎はとうとう真矢のこと、名前じゃ呼ばないんだよね…)まあ、この件に関しては、ノーコメントということにしておきます(苦笑)。
 しかし、ほっとしたのも束の間、突然のゆれが5人を襲う。「ミールが、動き出した…」 地下からせりあがる、黄金のピラミッド状の構造物(おいっ、最後の最後までEVAネタかぁっ!って、わかる人はわかったハズですが)。その頂上から天に向かって筒状の物体が、まるで天国の扉へと向かうエレベーターのように伸びて行きます。人類軍が攻撃しても、あっけなくバリヤーにはばまれて無傷のまま。
 一方、竜宮島の岩戸では、乙姫の最後の同化が始まっていました。「みんな、ありがとう」という言葉を最後に、乙姫の体は、指の先からだんだんと、緋色の液体に溶け出すように消えて行く。「そんな・・・乙姫ちゃん!」絶句する芹たちに、金色の光を放ちながら消えていく乙姫が、最後の笑顔を投げかける…。
 一方、フェストゥムの本拠地の内部を抜け、ピラミッドの壁から外に出た一騎たちが見たものは、ピラミッドの頂上から伸びる筒の中を、天に向かって上がって行こうとする緑の結晶。「敵のミールが空と繋がろうとしている。大気圏外から侵攻するフェストゥムと共に、全地球を覆う気だ。まだ、間に合う、マークジーベンの武器に同化して、あれを撃て!」それは、指揮官としての、総士の最後の命令。「わかった!」「引き金は遠見がひくんだ」「了解!」
 一騎が真矢の右手に自分の右手を重ね、ザインはジーベンのドラゴントゥースと同化する。「マークザインのエネルギーを最大出力で放射する。チャンスは一度きりだ。それ以上は一騎の体が持たない!」 一騎と真矢に指示を出しながら、心のなかで「彼らにとっては、あれがただひとつの希望だったのかもしれない…」とつぶやく総士。それに答えるかのように、「もし、そうでも、最後の希望じゃない」という声。「乙姫!?」 真矢の目がスコープの目標を捕らえ、引き金が引かれ、まぶしいばかりの光とともに、砕け散っていく北極のミール。「あのミールも、私と同じ。生と死、存在と無が、ひとつのものとして続いて行くことを示すため、この世に生まれた…」 遠く離れたまま交わされた、これが正真正銘最後の兄と妹の会話。「乙姫…還ったのか…?もうひとつのミールの元へ…乙姫…」
 岩戸の中の乙姫は、遂に姿を失ってしまいますが、その瞬間、岩戸にいる4人を、そしてCDCにいる弓子や澄美の髪をなでるように、柔らかな風が吹き過ぎて行きます。「コアが、島とひとつになった…」そう、乙姫は決して消滅したわけではない、その存在は形を変えて島の空気となり、島に生けるすべての命を包みこみ、優しくなでていく風となったんだと。「わたしは、ここにいるよ…」
 当初のミッションを達成した上に、北極のミールを破壊することができた4機のファフナーと総士を乗せ、竜宮島への帰路につこうとする輸送機。誰もがほっとした瞬間、閉じかけた輸送機の扉から突然黒いワームスフィアが進入し、あっという間に一騎の乗ったマークザインと総士を飲み込もうとする。「マークニヒト?そうか、ミールは己の死をもって、フェストゥムに個体であることを与えた!このままでは全員が巻き込まれる…一騎!」「ああっ!」 ワームスフィアごと、輸送機からなるべく遠く離れようとするマークザイン、それを必死に追いかける真矢のマークジーベン。「来るな!遠見!」と叫んだあと、真矢を安心させるように、「俺も、必ず…」と微笑みかけたまま、ワームスフィアの内部へと吸い込まれていってしまう一騎。「いやぁああっ、一騎くん!」と取り乱す真矢の姿は、総士を失いそうになったときの一騎の姿にかぶるものがあるんですが。
 真っ暗な闇のなか、浮かび上がるのは甲洋の姿。何故、ここで甲洋なのか?一騎や総士に一番近いフェストゥムは、乙姫がミールと同化した今となっては甲洋なんですよね。一騎と総士の存在が消えかかっていることに気づいた甲洋が、ふたりを探しに来た、っていう解釈でおけー?思うに、フェストゥムが「同化する」っていうのは、同化する相手を自分の中に取り込んでしまう、ということかもしれないけれど、同化されたものは、同化したものの中に留まる、というわけではなくて、別の次元の空間へと運ばれる、っていう感覚の方が近いような気がします。そう考えれば、モルドヴァでイドゥンに同化されたはずのミョルニアが、再び出現したこと、またザインに同化されたはずのイドゥンが、また再び現れたことにも説明がつく。ならば、今一騎と総士がいるのは、みんなが存在する現実世界と、そのフェストゥム内部につながる異次元との狭間か?「どこにもいない」とつぶやく甲洋に、「ここにいる」と答えたのは一騎の声?そして、やはり二人の異変に気づいたミョルニアが「存在と無がせめぎあっている・・・」と語ります。それでも尚、一騎と総士を探し、「どこにもいない」という甲洋に、再び「ここにいる」と答えたのは総士でしょうか?「一騎、総士・・・?」答える声に、甲洋が気づいたのか?
 暗闇の中、コックピットに固定されたまま、右腕を伸ばして、闇の中に落ちて行きそうな総士の左手をつかみ、引き上げようとしている一騎。「これが、全てを無に帰すフェストゥムの祝福。恐らく、現実世界では、既に僕らの存在は消滅している・・・」 寂しそうな表情で語りかける総士の体に、あのクリスタルはもう付いていない、すなわち、ここでの一騎と総士の姿は、現実のものではなくイメージの世界なんですね。落ちそうになる総士を支えようとする一騎の右腕に負担がかかり、スーツの約束の座標を記した部分が破けてしまうのも、イメージの世界での出来事。「一騎・・・」「まだだ、俺たちは、まだ、ここにいる!」「一騎・・・」「まだ、ここにっ・・・」そのとき、一騎の左腕をそっと掴んだのは、二人を探しにきた甲洋の姿。「甲洋!」 一騎と総士が同時に叫んだ瞬間、二人が届いたのは無の次元から現実世界へと繋がる扉だったのか?ワームスフィアが消え、仁王立ちするマークニヒト。しかし、甲洋に導かれ、「存在する」ことを最後まで諦めなかった一騎とマークザインは、このマークニヒトを内側から同化し返す、という離れ業をやってのけます。ザインに同化し返されそうになった瞬間、「私は、ここにいるっ!」と断末魔の悲鳴をあげたイドゥン。マークニヒトは全身をクリスタルに覆われた末に、消滅し、代わりにそこに現れたのは一騎のマークザインでした。総士から「存在することの喜び」を教えられ、北極のミールの崩壊によって、「個」として生き始めたイドゥンでしたが、結局その身を滅ぼしたのは、マークザインを同化しようとした「憎しみ」の心の故か?そして、消滅する瞬間、イドゥンは、自らが奪い、同化してきた命が感じたはずの「消えることへの恐怖」を身を、もって体験したのでしょう。
 熾烈を極めた北極での戦いも終結に向かい、大気圏外のフェストゥムのコアも、人類軍も、燃えて落ちて行きます。そして、ニヒトとの決着を付け、竜宮島に帰るべく、総士の指示に従って無傷の輸送機を同化しようとする一騎。「飛べるか、一騎?」と問う総士に、「飛べるさ・・・俺とお前なら・・・そうだろ?」 初めてリンドブルムで二人で飛んだ日から、流れた時間はそれほど無いはずなのに、本当に二人は遠くまで来てしまった・・・
 その頃、乙姫の姿が消えた岩戸の緋色の液体が、突然金色に輝き始め、そこに現れたのは光り輝く胎児の姿でした。「ミールが、命の循環を理解した」、驚きと感動の声を上げる千鶴。「乙姫ちゃんなの?」と問われ、「いいえ、本人が再生されるわけではないわ、それでは同じものをコピーすることになり、生命の本質からはずれてしまう。」それは、乙姫では無いけれど、乙姫だった存在が新しく生まれ変わった姿。「ならば、いずれコアとして成長し、きっと我々と会話をするようになるだろう」と語る史彦。乙姫という存在は、島の空気となって命をはぐくむ一部となったわけだから、その環境の中から生まれた新しい命は乙姫が一体化したミールから生まれたもの。そして、その新しいコアこそが、人間と共存するフェストゥムの新しい形になっていくのか。
 輸送機と一体化して、竜宮島に向かって飛んでいくマークザイン、「このまま直進すれば、島へ帰れる」と言う総士に、「最後の最後で、おまえに助けられたな」と感謝を口にする一騎。「一騎、僕はフェストゥムに痛みと存在を教えた・・・そして、僕は、彼らの祝福を、存在と無の循環を知った・・・」総士の言葉の真意を掴みかね、「存在と、無の循環?なんのことだ?」と聞き返す一騎。「僕の体は、もう殆ど、残っていないんだ・・・一騎・・・」この言葉を告げたときの、総士の儚げな表情を思い出すたび、管理人は胸をしめつけられるような感情に襲われてしまうのですよ。「島に戻って、治療を受けよう!そうすれば、きっと・・・!」「お前はそうしろ、一騎、僕はもうすぐ、いなくなる・・・」「総士?何を言ってるんだ?やめてくれ、総士!」 運命は、繰り返し一騎から一番大事なものを奪って行こうとする。気が動転してしまった一騎をなだめるように、「僕は一度、フェストゥムの側に行く。そして、再び、自分の存在を作り出す。どれほど時間がかかるかわからないが、必ず・・・」と語りかける総士、その言葉とともに、クロッシングしていた一騎の脳の皮膜から、静かに総士の姿は消えて行き、そして、今度こそ、一度手にしたはずの大切なものは、マークザインの指の間から、曙光に赤くきらめきながら、零れて行ってしまいます。「総士、いるんだろ?そこにいるんだろ?総士、総士!!」 その一瞬、一騎の胸に直接響いたのは、総士の最後の言葉、最後の約束。「僕は、ここにいる・・・いつか再び、出会うまで・・・」 そうして、今度こそ総士であった存在は、現実世界からは消滅し、それと同時に総士を包んでいたコックピットも風化したかのように砕け、そしてザインの指の間から消えて行き、総士という人間が存在していた痕跡は跡形も無く消え去ってしまいます。その瞬間の、一騎の、全身の力が抜けていくような「ああっ・・・」というため息と、そしてそのあとの「総士〜〜っ!」という叫びが、しばらく耳から離れなくて困ってしまったわけで・・・いや、なんというか、もう、言葉が無い。
 総士を失ったまま竜宮島に帰る一騎を迎えるのは、一騎の帰りを信じて待機していた、真矢のマークジーベン。白鳥のように舞うマークザインと、それによりそうように飛ぶ紫のマークジーベンの姿は、絵になるなぁ、と思ってしまいました。地上に降りてコックピットから出た一騎、その右腕には、あの座標の文字が、がやぶけた痕跡も無く鮮やかに残っています。青ざめた顔、そして紅く染まった悲しげな瞳のまま消えていってしまった総士のことを思う一騎。「総士・・・俺はここにいる・・・ここでお前を待っている・・・ずっと・・・」 そして、一騎の頬を伝う一筋の涙。ふと振り返ると、そこには、喜びに満ちた表情で一騎を見つめる真矢の姿があります(おい、総士が居ないことに気づけ〜、っていうか、気づく気無いだろうっ!といのは、管理人の最後の突っ込み)。その姿に、初めて微笑む一騎なんだけれど、その微笑がまた胸をしめつけられるくらい悲しい。そして、最後の最後に総士のポエム復活。
 「今ならわかる、たとえ苦しみに満ちた生でも、僕は存在を選ぶだろう。もう一度、お前と出会うために。お前が信じてくれる限り、いつか、必ず帰る・・・お前がいる場所に・・・」

 「始まれば、いずれ終る」という歌詞がいつも心にひっかかっていました。長いような短いような半年間、ファフナーと共に色々なことを感じ、そして色々なことを語ってきましたが、とうとうそれも終わりですね。本当に寂しい。
 まだ最終回が終って日が浅いので、ファフナーについては色々自分の中で考えている段階です。でも、今現在まで考えたところまでで、できる限りその先のことを考えて、感想の締めとしたいと思います。
 というのは、ズバリ、総士の今後についてです。これについては、ネットでも色々な意見が飛び交ってるみたいですね。まあ、ファフナーが商業ベースで製作されたアニメである以上、その続きができるか否かは、ずばり経済的にペイするかどうかの一点にかかっているわけで、このファフナーの終り方というのは、たとえ続編が作れなかったとしても、話としてきれいに完結することを目指した結果として、それなりに満足のいくものだったと、管理人はひそかに評価しております。続編がありえるとすれば、地上波、CS、あるいは劇場版、OVA、といった展開が考えられますが、それも予算次第でしょう。というわけで、ファフナー信者の私は、せっせとDVD買い続けてるわけですが(苦笑)。
 そういった2次展開があるとすれば、焦点は当然、「総士の帰還」ということになってくると思います。 アニメというものが、複数の人の意見によってプロットなりを組み立てていくことを思えば、或意味予想する事自体がナンセンスなのですが、それでも管理人なりに予想を立ててみました。  
 でもって、一番こうだったらイヤだな、と思うのは、誰かの子どもとして総士が転生する、っていうパターン。ファフナーというのは、あくまでSF的なものであって、輪廻転生ものっていうのは、どうもその辺の主題とは相反するものであろうと。だいたい、輪廻転生という発想そのものが、命は両親の遺伝子を受け継いで全く新しいものとして生まれる、という大原則を無視したものになりますので。一騎と真矢の子どもで、なんて有り得ないでしょう(笑)。どうやってこの二人の遺伝子組み合わせて総士ができるんだ(笑)!ていうか、そんな展開だったら、見るのやめます。
 というわけで、今までのファフナーのプロットを追ってきた結論からいって一番可能性が高いのは、やはり総士が、新しい形のフェストゥムとして帰ってくる、というパターンじゃないでしょうか。真壁紅音は、フェウトゥムの存在を祝福したからこそ、同化されたあとも均質化することなく、真壁紅音の共鳴核、という個性を持ったまま存在し続けたんですよね。ミョルニア=紅音ではないかもしれないけれど、ミョルニア自身が認めているように、紅音の意志を継ぐ物として、独立した個として存在する新しい形のフェウトゥムになったことは間違いありません。甲洋は、本編の中では中枢神経を同化されただけで、人間としての体は消滅していなかったので、総士のパターンとは少し異なるのですが、結局はスレイブ型の戦闘型に変わっちゃったりしてるんで、まあ人間としての肉体の有無は、この際あんまり関係ないか、と思ったり。彼もまた、フェストゥムの新しい形でありながら、甲洋であった頃の記憶は、むしろ同化される直前よりクリアになっているみたいですし。総士の場合は、もともとフェストゥムの因子を他の人より強く持っていたはずで、或意味一番フェストゥムに近い存在だったということ、そして、フェストゥムに、存在と痛みを教えた存在である、ということは、最初にフェストゥムを理解した紅音以上にフェストゥムの進化に大きな影響を与えているはずです。よって、紅音よりも、更に進んだ形で、新しいフェストゥムとしての自分を作り上げるだけの下地を持って、「向こう側」に行った、ある意味その自信が、「必ず帰ってくる」という約束に繋がったのでは無いか、と思ったんですが。
 それでは、人間であった総士と、フェストゥムとして帰ってくる(と、とりあえず断定)総士は、どこが違うのか?そこまで行くと、それは、誰にも予想がつかないでしょう。特に映像化されたりする場合は、冲方さんひとりの考えで企画が進むわけでも無いので、それこそ神のみぞ知る。総士の最後の言葉が、「たとえ苦しみに満ちた生でも、僕は存在を選ぶだろう」であるっていうのは、現世でも十分に不幸度バクハツだった総士ですが、来世(っていうのはあまり適当ではないかもしれないけれど、まぁフェストゥムとして生まれ変わる、っていう意味で)でもやっぱり苦しんじゃうんでしょうか。あんまり可哀想じゃないか、総士。でも、このあまりの不幸っぷりが、総士の人気のポイントだったりするとしたら、やっぱり総士は永遠の不幸キャラか・・・泣けてくるなぁ。
 どちらにしろ、「限りなく人間に近い形のフェストゥム」として帰ってくることを期待したいです。
 一方一騎のほうはどうかというと、彼もまた、マークザインに乗ってる状態では、誰よりもフェストゥムに近い人間と言えるでしょう。これから先、マークザインがどういう方向に向かっていくのか、そして、総士と再会するとして、その先に待つものが何か?いくら総士が帰ってきたとして、前と全く同じ関係にはならないでしょう。そのあたりが非常に気になる。そして、北極のミールを失っても、フェストゥムが全部消滅したわけではないはずですから、その残されたフェストゥムたちと、人間達がどうやって共存していくのか?そのあたりも、見てみたいところではあります。古代ミールが、人類の進化に大きくかかわっている、という設定からして、続編では人類とフェストゥムが一体化して人類が更に違う形に進化していっく、なんていう壮大な話になったりして。
 ぶっちゃけ、管理人は、どんな形でもいいから、続編を強く希望してると。後日談みたいな話が30分程度でおしまい、みたいなのは、ちょっと悲しいかなぁ。
 
 というわけで、ファフナー本編は終ってしまいましたが、総士の帰りを待っているのは一騎ひとりじゃあダメだろうと。なんせ、「帰ってきて〜!」という声は、少しでも多いほうがいいのですよ、やっぱり。なので、私もとりあえず、ここでサイト開いたまんんま、総士の帰りを迎えられたらなぁ、と思っています。・・・あんまり、待たせるなよ、総士(笑)